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ネット大河小説・畠山重忠34

急遽、福原より上洛した父清盛の意を受け、知盛は六波羅の平家の侍たちに鎧や胴丸で武装させると、朱雀大路など都の要所の警護に当たらせた。
 後白河法皇や反平家の公卿たちへの示威行動であるが、「百練抄」ではこの様子を「武士、洛中に満る」と表現し、清盛が公卿たちを恨み、一族を率いて鎮西に下向するとの噂が流れていたことも記している。
 余りに物々しい様子に、洛中の人々は不安になっていたが、ともかくも、知盛は侍たちの配備を完了すると、その旨を西八条に報告すべく使者を送ることとした。
 それに指名されたのが重忠である。上洛して二年半、初めての大役であった。
「承知つかまつりました」
 きっぱりと答えて、一礼するや、愛馬三日月に跨がり、朱雀大路から八条大路を西へと走らせた。法皇と平家との間で緊張が高まり、いつ何が起きてもおかしくない。が、それがどのような意義があるのか、まして後世にはどう評価されるのかなど考えるゆとりもない。ひたすらに役目を、ただ命じられた仕事をやり遂げることしかこの時の重忠は考えてていなかった。天空には前日の夕刻まで小雨を降らせていた雨雲は去り、からりとした冬の青さが広がっていた。

 西八条の清盛の別邸。寝殿前の中庭に跪いた重忠の前に、ついに平清盛その人が現れた。大きめの坊主頭にぎょろりとした目は、さすがに威圧するものがある。
 重忠が知盛からの報告を、やや力んだ口調で伝える終わると、清盛は
「大儀である」
 と応じ、にこりと笑みを浮かべた。存外、人懐っこい表情である。
「重忠とやら、都に出て、何年になるか」
「二年半になります」
「そうか。して、どうであろう。都は楽しいか」
 意外にも、清盛は親しげに話しかける。
「はい」
 重忠はきっぱりと答える。共に今様を習っている静のことがふと思い出され、照れ臭さも覚えていた。
 清盛は笑みを絶やさずに、おもむろに階段から下りると、しゃがみながら、
「それは何よりじゃが、わしは平安京が大嫌いなのじゃ。それゆえ、いつもは福原におる」
 重忠は戸惑ったような表情で清盛を見上げている。
「武蔵で育ったそなたには、珍しく、面白いことも多いであろうが、わしは若いころから都が性にあわなくてのう。特に嫌いなのは、僧兵どもじゃ。そなたも聞いたことがあるやもしれぬが、わしは昔、祇園社の神輿に矢を放ったこともあった」
 清盛はその咎で流罪に処せられるところを、鳥羽法皇のはからいで許されていた。
「坊主どもは何かと仏を後ろ楯にして、横車を押してくるが、そうした振る舞いは果して仏の教えにかなうものなのか。わしはいつも疑っておったのじゃ。とかくこの都はしがらみが多い。それよりもわしが好きなのは海じゃ」
 海という言葉を口にした清盛の瞳は遠くを見据えているようにもみえる。
「わしの親父の忠盛どのは瀬戸内の海賊どもを退治し、海辺の荘園もたくさん持っていた。そのせいか、わしはいつも福原で海を見ていると、心が晴々としてくるのだ。遙か海の彼方には宋国(中国)があり、さらに西には天竺ぞ。天竺は釈迦牟尼の生まれたもうた国。わしはいつの日か、船に乗って天竺まで出掛けて見たいと思っておった。釈迦牟尼の真の教えとは何であるのか確かめるためにのう。ところが、宋の商人たちの話では、天竺では仏の教えはあまり広まらず、外道を信じる者が多いという」
 外道とは仏教以外の宗教のことである。天竺すなわちインドでは、仏教よりもヒンズー教が盛んになっている。また、西アジアからはイスラム勢力も侵入し、イスラム系の商人たちもインド洋から宋の南岸にかけて活動していた。海のシルクロードから流れて来た情報が宋の商人たちによって清盛のいる福原までもたらされていた。
「わしがそなたくらい若ければ、船で異国へと渡ってみたいものではあるが、あと何年も生きられまい。それならばせめて異国との交易を盛んにし、国を富ましてみたいものよ。国が豊かになれば、飢えた民もいなくなるのじゃ」
 そこまで清盛が語った時、家人の源大夫判官季貞が現れ、
「只今、静憲法印どのがお帰りになられると」
 信西入道の子静憲は後白河法皇の使者として、清盛をなだめるために西八条へ派遣されていたが、なかなか面会できずに待たされ、帰ろうとしていた。
「いや、これより参る」
 清盛はそう答えると、再び、重忠に向かい、
「本日は役目、大儀であった。知盛にもよしなに伝えておくように」
 と言い置いて、寝殿の奥へと引き上げた。
 平伏しながら見送った重忠は、書物を読む時とは別の生きた学問をしたようで、充実感を覚えていた。清盛という人物の持つ壮大な気概と夢。これらを持った人を他には知らない。(続く)
菊池道人 ( 2012/05/23 14:25 )
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