トップ ニュース 速報 Olive Weekly 動画 ゲーム トピコメ サイトマップ
  トップ 新着 コラムと特集記事PPV国内エンターテインメント経済海外暮らしコンピュータサイエンスクッキング使い方とQ&A
  オリーブの声 Lサイド ニュース特報 小沢一郎の部屋 ガソリン暫定税率廃止 税金のムダ 学校教育と家庭教育 母子家庭 後期高齢者医療 障害者と福祉
 
  非正規雇用・労働組合 ワールドレポート 徳山勝連載・コラム 健康と美容コラム 八ッ場ダム問題 芸能スポーツ 夢を叶えて メディア報道のあり方 著書・書き下ろし 安倍政権
  速報・特報 セラヴィ・コラム 読者コラム 東北地方太平洋沖地震 福島第一原発事故 福島からの手紙 NEWS OPINION VERITAS オリーブデイリー
コラムと特集記事 > 読者コラム
ネット大河小説・畠山重忠34

急遽、福原より上洛した父清盛の意を受け、知盛は六波羅の平家の侍たちに鎧や胴丸で武装させると、朱雀大路など都の要所の警護に当たらせた。
 後白河法皇や反平家の公卿たちへの示威行動であるが、「百練抄」ではこの様子を「武士、洛中に満る」と表現し、清盛が公卿たちを恨み、一族を率いて鎮西に下向するとの噂が流れていたことも記している。
 余りに物々しい様子に、洛中の人々は不安になっていたが、ともかくも、知盛は侍たちの配備を完了すると、その旨を西八条に報告すべく使者を送ることとした。
 それに指名されたのが重忠である。上洛して二年半、初めての大役であった。
「承知つかまつりました」
 きっぱりと答えて、一礼するや、愛馬三日月に跨がり、朱雀大路から八条大路を西へと走らせた。法皇と平家との間で緊張が高まり、いつ何が起きてもおかしくない。が、それがどのような意義があるのか、まして後世にはどう評価されるのかなど考えるゆとりもない。ひたすらに役目を、ただ命じられた仕事をやり遂げることしかこの時の重忠は考えてていなかった。天空には前日の夕刻まで小雨を降らせていた雨雲は去り、からりとした冬の青さが広がっていた。

 西八条の清盛の別邸。寝殿前の中庭に跪いた重忠の前に、ついに平清盛その人が現れた。大きめの坊主頭にぎょろりとした目は、さすがに威圧するものがある。
 重忠が知盛からの報告を、やや力んだ口調で伝える終わると、清盛は
「大儀である」
 と応じ、にこりと笑みを浮かべた。存外、人懐っこい表情である。
「重忠とやら、都に出て、何年になるか」
「二年半になります」
「そうか。して、どうであろう。都は楽しいか」
 意外にも、清盛は親しげに話しかける。
「はい」
 重忠はきっぱりと答える。共に今様を習っている静のことがふと思い出され、照れ臭さも覚えていた。
 清盛は笑みを絶やさずに、おもむろに階段から下りると、しゃがみながら、
「それは何よりじゃが、わしは平安京が大嫌いなのじゃ。それゆえ、いつもは福原におる」
 重忠は戸惑ったような表情で清盛を見上げている。
「武蔵で育ったそなたには、珍しく、面白いことも多いであろうが、わしは若いころから都が性にあわなくてのう。特に嫌いなのは、僧兵どもじゃ。そなたも聞いたことがあるやもしれぬが、わしは昔、祇園社の神輿に矢を放ったこともあった」
 清盛はその咎で流罪に処せられるところを、鳥羽法皇のはからいで許されていた。
「坊主どもは何かと仏を後ろ楯にして、横車を押してくるが、そうした振る舞いは果して仏の教えにかなうものなのか。わしはいつも疑っておったのじゃ。とかくこの都はしがらみが多い。それよりもわしが好きなのは海じゃ」
 海という言葉を口にした清盛の瞳は遠くを見据えているようにもみえる。
「わしの親父の忠盛どのは瀬戸内の海賊どもを退治し、海辺の荘園もたくさん持っていた。そのせいか、わしはいつも福原で海を見ていると、心が晴々としてくるのだ。遙か海の彼方には宋国(中国)があり、さらに西には天竺ぞ。天竺は釈迦牟尼の生まれたもうた国。わしはいつの日か、船に乗って天竺まで出掛けて見たいと思っておった。釈迦牟尼の真の教えとは何であるのか確かめるためにのう。ところが、宋の商人たちの話では、天竺では仏の教えはあまり広まらず、外道を信じる者が多いという」
 外道とは仏教以外の宗教のことである。天竺すなわちインドでは、仏教よりもヒンズー教が盛んになっている。また、西アジアからはイスラム勢力も侵入し、イスラム系の商人たちもインド洋から宋の南岸にかけて活動していた。海のシルクロードから流れて来た情報が宋の商人たちによって清盛のいる福原までもたらされていた。
「わしがそなたくらい若ければ、船で異国へと渡ってみたいものではあるが、あと何年も生きられまい。それならばせめて異国との交易を盛んにし、国を富ましてみたいものよ。国が豊かになれば、飢えた民もいなくなるのじゃ」
 そこまで清盛が語った時、家人の源大夫判官季貞が現れ、
「只今、静憲法印どのがお帰りになられると」
 信西入道の子静憲は後白河法皇の使者として、清盛をなだめるために西八条へ派遣されていたが、なかなか面会できずに待たされ、帰ろうとしていた。
「いや、これより参る」
 清盛はそう答えると、再び、重忠に向かい、
「本日は役目、大儀であった。知盛にもよしなに伝えておくように」
 と言い置いて、寝殿の奥へと引き上げた。
 平伏しながら見送った重忠は、書物を読む時とは別の生きた学問をしたようで、充実感を覚えていた。清盛という人物の持つ壮大な気概と夢。これらを持った人を他には知らない。(続く)
菊池道人 ( 2012/05/23 14:25 )
ページトップに戻る
私の意見 評価する  評価しない
私の意見の投稿は評価する・評価しないを選んで投稿ボタンを押して下さい。
同時にご意見があるときは評価を選んだ後に下記に書いて投稿ボタンを押して
ください。評価は即時に反映されますがご意見は、必ず反映されるわけではご
ざいません。また反映後に削除される場合もございますので、ご了承をお願い
します。意見の投稿は10文字以上200文字以内でご入力下さい。
(200文字以上はこちらから)3回まで投稿いただけます。

 
貧乏じじいの雑感 3(1)( 2017/06/21 18:02 )
貧乏じじいの雑感 2(0)( 2017/06/17 09:43 )
貧乏じじいの雑感 2(再投稿(1)( 2017/06/14 22:52 )
貧乏じじいの雑感 1(2)( 2017/06/05 16:25 )
畠山重忠265(4)( 2017/05/31 10:39 )
閣議決定の連発(2)( 2017/05/26 10:22 )
森友は?加計は?(3)( 2017/05/13 08:03 )
進む【 原発再稼働 】(再投稿(1)( 2017/05/01 18:17 )
五節句・・・改めて調べる(2)( 2017/04/13 11:26 )
畠山重忠264(0)( 2017/04/13 11:23 )
畠山重忠263(0)( 2017/04/11 08:50 )
畠山重忠262(0)( 2017/04/10 05:52 )
畠山重忠261(0)( 2017/04/09 15:49 )
畠山重忠260(0)( 2017/04/09 15:49 )
畠山重忠259(1)( 2017/04/04 14:14 )
次へ>







会員登録はこちら - 会社紹介 - 問合せQ&A
ご利用規約 - ニュ-ス配信申込停止 - 個人情報保護法への取組み 広告掲載

Copyright (C) 2010 OLIVENEWS INC. All Rights Reserved.









close