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ネット大河小説・畠山重忠101

文覚は頼朝の名代として、木曽義仲を諫言する役目を担っている。
 上洛後の義仲の芳しくない評判は、坂東にも聞こえていた。
 賀茂神社や石清水八幡宮の荘園に兵たちが乱入し、青田を刈り取って馬草にしたり、さらには皇位継承問題にも口を出し、以仁王の遺児である北陸宮を即位させるよう、後白河法皇に迫ったりもした。
 結局は、高倉上皇の皇子である尊成親王こと後鳥羽天皇が即位したのであるが、義仲の傍若無人は都の貴族たちの反感を買っていた。
 もちろん、義仲にも言い分はある。北陸宮の父である以仁王こそが反平家の先駆者であるからには十分に皇位継承の資格があるというものだ。
 また、兵たちの強引な刈り取りも、飢饉の影響による兵糧不足ではやむを得ないことと考えていた。少々の略奪も大目に見なければ、北陸の武士たちや美濃や近江の源氏を寄せ集めた混成軍の兵たちは離散してしまう恐れもある。後世の織田信長や新撰組のように厳しい軍律を課すことは思いも寄らなかった。
 同じく源氏の従兄弟でもある頼朝のように、坂東平野の耕作面積の広い土地を媒介とした主従関係を豪族たちと結ぶことは、山岳地帯の木曽では困難であるという限界もあった。
 しかし、略奪行為はいかなる理由があれ、許されるはずもない。
 法皇からの内々の要請もあり、頼朝は従兄弟でもある義仲に忠告することを決意したのであった。
 その使者には院ともつながりのある文覚が派遣されることになったのである。
「木曽どのの振る舞い、目に余るものがあるとか。文覚どのも大変なお役目でございますな」
 重忠が労いの言葉をかける。
 その後で直実が、
「それがしは都にいた頃から、どうも法皇さまの御心がさっぱりつかめませぬな。清盛公を引き立てられたかと思えば、先年の鹿ヶ谷の件では背後から糸を引いておられたとか。平家都落ちの際にも、突如、お姿を隠されて、木曽どのにお味方され、そして先だっては院の庁官が鎌倉に参られた。一体、どのようなご存念なのか、わしらのような田舎育ちの武骨者にはさっぱりわからぬ。文覚どの、貴僧は確か以前は北面の武士とか。そもそも、法皇さまはどのようなお人柄であらせられたのか」
 すると文覚は腕組みをしながら、澄みきった秋空を見上げた後で、
「直実どのも都で噂には聞いておられたやもしれぬが、法皇さまはお若い頃、今様に凝られておられた。喉が枯れ、お声が出なくなるくらいによく歌われていたが:。それくらいに打ち込まれるからには、今様の中にこそ法皇さまの目指される境地がおありだということであろう」
 すると直実は、重忠の方を振り返り、
「今様の中にこそ:。重忠どの、ご貴殿はおわかりか」
 が、重忠も突然の謎かけに、返答に窮するばかりである。
「文覚どの、重忠どのは都にいる折り、今様を学ばれていた。たしか、磯禅師どののところに通われていたのであったな」
 直実が文覚に説明すると、重忠は当時のことを思い出した。そして、その記憶の最初に現れたのが静である。今や妻子ある身となっては、過ぎ去りし思い出を日常的に思い起こすこともほとんどなくなっていたが、直実の話で思いもよらず、心に蘇ってきた。そして、それは心配を伴うものであった。
 急な福原遷都とともに静も平安京を離れたが、今はまた都は元へ戻ったからには静もそれについてきたはずである。その都は、今、義仲配下の武者たちの狼藉に怯えているという。静は無事なのであろうか。切ない思いがこみあげてきた。
 が、それを遮るかのように文覚が、
「しからば重忠どの、貴殿は磯禅師どのから直に学ばれたか」
「いえ、主に稽古をつけていたのは、左近という傀儡子です」
「左近:」
 文覚は眉間に皺を寄せる。何か意味ありげだな、と重忠は感じた。
 しばしの沈黙の後、文覚は、
「重忠どの、いつか貴殿の師匠と再会することがあったなら、今様の心とは何かと尋ねてみるがよろしかろう。そうすれば、法皇さま御心もおわかりになるやもしれぬ。しからば、これにて」
 文覚は一礼し、くるりと背を向け、すたすたと歩きだした。その懐には、頼朝が謝礼の代わりにと文覚に託した左近宛の貝殻があることを重忠は知らない。
「今様の心を悟るには、それがしは未熟なままでござる」
 重忠は苦笑いを浮かべたが、左近の名を聞いた瞬間の文覚の表情は気にならないでもなかった。(続く)
菊池道人 ( 2013/09/02 13:40 )
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